12月1日の朝。ご近所の飼い猫が停めてあるバイクシートの前に座り込んで
しきりと中へ向かって威嚇している姿をたまたまバルコニーにいた夫が見つけた。
「きっと子猫だよ。見ておいで。」わたしは子猫と聞いてすぐにそこまでいって
威嚇している猫に「こら、何してるの?」と言うと、その飼い猫は逃げ出してゆき
バイクシートの中をのぞくと、そこにいたのは子猫ではなく、かわいいキジシロ猫だった。
猫はじりじりとカバーの奥まで下がって、わたしの差し伸べた手には近づこうとせず
ゴールドに澄み渡った瞳で彼はわたしを見つめ、いついつまでもおびえていた。
まんまる顔の若い猫だった。それが
あさりちゃんとの出会いだった。
──── それから数日後、そのキジシロ猫は、わが家の濡れ縁の下の
ダンボールをねぐらにわたしを見上げては「しゃーしゃー」言うまでになっていた。
出会いから1週間ほどで、わが家で寝食をとるようになっていたのである。
野良猫にごはんをあげること。それはその子の猫生に責任を持つ覚悟を決めること
であるとわたし個人は思っている。だから無責任にごはんだけやることはできない。
なのでこのキジシロ君も元気に逃げ回れるうちは無理に保護しないと決めていた。
環境さえゆるせば、猫の自由意思をことごとく尊重したかったからだ。
家猫には家猫の猫生がある。「野良猫」という言葉はすきではない。
なので岩合さんの言葉を借りて「自由猫」自由猫には自由猫の猫生があるだろう。
この猫を保護しようと決めたきっかけは、近所の猫にいじめられ、いつも追い掛け回され
逃げ惑ってひとりぼっちでいたこと。足が不自由でしっぽにも虐待の形跡があったこと。
しっぽの真ん中が麻ヒモでかたく蝶々むすびで結んであり(どう考えても人為的な虐待)
数日後には、皮一枚でブラ下がっていたしっぽの半分が取れてしまったこと。
決定打は、ご近所のかたから、ワナをしかける異常な人間(人間の皮を着た悪魔)が
近所にいるという話を聞いたこと。それでわたしの意志はかたまった。
ところでこのキジシロ猫。パックリ前髪5:5分けのなかなかのイケメンならぬイケニャン。
その名は、勝手に命名・
あさりちゃん♂何度か部屋へ誘導作戦を試みた。
しかし、いつも食い逃げ状態^^:かなりの知能犯である。
しかも怪力。足にもケガをしているので、かなりの警戒心の強さ。
かくしてイケニャン保護ゲリラ作戦は病弱だめだめ主婦によって本格的に始動されていった。
作戦の決行は夜が最適と思われた。
なぜなら昼に決行したところ、作戦中にポカポカ陽気と薬の効果で、
うっかりわたしはコタツで寝てしまい(どんだけウッカリはちべえなんだ?!)
目ざめたら、
あさりちゃんは、すでにカリカリを食べ終えて、きびすを返し出て行くところで
まぬけなわたしは、ただ親指をくわえて寝たふりを決め込むしかなかったのである。
まさに食い逃げ状態。ミイラ取りがミイラ?ああアホすぎる(T-T)失敗は成功の母。
それで夜である。まず家中のあかりを落とし、ほんの少し和室のガラス戸をあけておく。
カリカリを並べてゆく。部屋の奥へとむかって。
そう、ヘンゼルとグレーテル状態というわけ。一番奥にはお菓子の家ならぬウェットフード
という仕掛け。
わたしは冷えると激痛の走るからだをこれでもか?とモッコモコに着膨れさせ、
タイツにタイツ、レッグウォーマーにレッグウォーマーを。くつした3枚あたりまえ。
サポーターをサポーターしつつ、ホッカイロ貼りまくりで、ホフク前進のような体勢で
彼の来るのを待った。待ちながら、一体わたしは何をやっているんだ?
ふと、笑いがこみあげてきた。こんな姿だれにも見せられない。
夫だって知らない(夜勤中)
自宅なのに何が悲しくてコタツに隠れ、迷彩服を着てゲリラよろしくフリースを頭から
すっぽりかぶって、目だけ出してギョロギョロ様子をうかがうのか。怪しい。怪しすぎる。
怪しいいでたちのニャンボー(わたしのこと)が配置について1時間ぐらいたったころ・・・
ネコの耳が障子戸からすけて見えた。ターゲット登場である。
あさりちゃんが抜き足差し足で入ってきた。わたしのチキンな心の臓は
ドキ
ドキドキドキ縄文式土器。
だが寸でのところで失敗。戸を閉めるのが間に合わなかった。
いろいろ工夫して、ガラス戸にクイックルワイパーの柄をガムテープで貼って
開閉をスムーズにできるようにしてみたが、コタツの位置から遠すぎて、棒に手が
届かず、あえなく敗退。そんなこんなで幾度もゲリラ作戦を試みるも
意外に怪力な
あさりちゃんVS病気で握力や
筋力がいちじるしく低下しているアラフォーのわたしとでは、きびしい闘いであった。
すべて惨敗。
それでも彼は毎晩、わが家の軒下でわたしが用意したダンボールベッドで眠り、
ごはんも食べてくれていた。毎日3時には軒下に帰宅。いい子だ。
これはもう根くらべ。ゆっくり仲良くなってもらって無理なく保護するしかないね。
と夫と相談して決めたのだった。
そして12月15日(水)の朝。やっと保護した。今度は無理なく。
わたしの手のひらからごはんを食べてくれるようになったところで
そーっとワキの下をだっこ。
あさりちゃんは不思議と暴れなかった。
長かったこの2週間。毎日が不安と希望の毎日。
あさりちゃんのことで頭がいっぱい。
保護に失敗するたび、
あさりちゃんの信頼を失ったのでは?と凹み
本当に保護するべきなのだろうか?
あさりちゃんにとって何がしあわせなのか?
自問自答と反省の日々。
あさりちゃんは闘病中で外出もままならないわたしの希望でもあった。
ケガして不自由な足でもジャンプを工夫している姿。彼のチェレンジする姿に自分が重なる。
わたしもあきらめちゃいけない。工夫すればいいんだ。
今までできていたことが、スムーズにできないもどかしさ。彼もわたしと同じなのだ。
どれだけ勇気づけられてきたか知れない。今でもそうだ。
今は和室に隔離中で、しっぽは数日前に取れてしまい今は半分ない。
化膿しているもののたいしたことはなく、化膿止めの薬をもらった。
右うしろ足のケガは、だいぶ前の骨折跡だそうで回復しきており、今すぐ治療の
必要性はないとのこと。
保護してすぐ、
あさりちゃんが全身を投げ出してわたしに甘えてきてくれたとき
わたしは声をあげて泣いた。さびしかったろう。こわかったろう。不安だったろう。
でももうだいじょうぶ。
今では、ほらこのようにわたしのおなかの上でマッサージまでしてくれる
(毛づくろいしてるだけ)
トイレも一発で覚えた。推定年齢1歳前後。ヤングなイケニャンはやっぱりちがう!
本当にイケている
あさり王子。
きのうは、かかりつけの獣医さんで見てもらって薬を貰い、血液検査の結果も
内臓も数値も問題なくすべてクリア☆
今は隔離中のため、ケガの様子を見ながら、来年また手術前に検査をして去勢させたら
やっと
しじみと、じかにご対面となる。
そんなこんなでバタバタ大忙しな日々だったのだ。作戦を終え、どっと疲れが出て、
わたしは症状が悪化したりした。^^:この記事をタイピングするのに実に1週間かかった。^^:
あさりちゃんありがとう。信じてくれてありがとう。
うちに来てくれてありがとう。
何より絶対に保護に反対されると思っていたのに(わたし自身が治るかどうかも
わからない病気で通院療養中の身なのに)認めてくれ、すぐに
あさりちゃんを
病院へ連れて行ってくれ、きもちよく協力してくれた夫に感謝感謝である。
しじみ姫と
あさり王子でボンゴレビアンコのようなコンビ名(爆)
あたらしい家族がふえました。
今後とも、2にゃんともどもよろしくおねがいいたしますm(_ _)m
追記、
やはり疲れが出たのか?昨夜は、急性胃腸炎でのたうちまわり、痛みの連鎖反応で
しびれくらげがクーデターを起こしましたとさ( -_-)とほほ・・・苦笑
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